【d!】シンデレラ♂を迎えに来ないでください (ページ3)

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一方その頃、歯を食いしばって階段をなんとか上りきり、ホールへと駆け込んだAはそろそろと壁際を移動して、なんとか入口を目指そうとしていた。

ばかみたいに広い上、人もめちゃくちゃいる。
足が限界に近いので、ガラスの靴を手に持って裸足でペタペタ歩いて突っ切りたいのだが、
視線が多いホールの中でそんなことをすれば、あっという間に不審者だと思われて斬首刑だ。
ここは上手く切り抜けるしかない。

Aがもう一度決心し足を踏み出した途端、すぐ前にいた男が急に後ろに下がりAとぶつかった。

『わ』

tn「えっ」

慣れない靴と痛みで力が入らない足のおかげで上手く自分の体重を支えられず、Aは後ろに倒れて尻餅をついていたた、と情けない声を出す。
男とはいえ一応女に見えるAを転ばせてしまったと目の前の男は焦り倒しているようだ。

tn「す、すみません、お怪我はないですか？」

しきりに怪我はないかとAに確認してくれているところ申し訳ないのだが、
正直なところ自分が怪我しているかどうかよりも自分のスカートの中身が見られていないかどうかが
気になってしょうがない。
もし股間のもっこりを見られていたならば女装をして舞踏会に参加する変態として糾弾されるまで
もう間もないだろう。

『…いえ、大丈夫です…』

立ち上がらせてくれようと差し出された手を握って立ち上がる。
やっべ、手汗びっちょびちょだったけど大丈夫かな。
これ以上自分を追い詰めるわけにはいかないと適当に会話を打ち切ってするりと男のそばから逃げ出した。
どうせ金輪際この会場にいる人間とは会うこともないんだし、多少の無礼を働いても大丈夫だろう。

背後から聞こえてくる困ったような男の声をガン無視して、ツカツカと急ぎ足で会場を走り抜ける。

『あった！入ってきたのはあそこの扉や…やっと帰れる…！』

重い扉をなんとか開けて、隙間に体をねじ込んでやっとこさ外に出た。
がしかし、さすがはお城。とんでもなく広い。右も左もだだっ広い空間が広がり、出口はどこなのかまるで見当も付かない。

『どうしよ…』

明かりの灯る長い廊下をあてもなくふらふらと歩く。
こんなザマでこのお城から脱出なんてできるのだろうか。

誰か使用人の人でもつかまえて出口への道を聞こうと思っていたのに人っ子一人いないし。

ブツブツと文句を言いながらキョロキョロと辺りを見回しながら歩いていたAに、
何かがぶつかった。