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「コレでええか?めっちゃ壊れてるけど……」
『はい、大丈夫です。ありがとうございます』
ニコッと笑うと、Aはその燭台を大切に握りしめた。
両手でしっかり握り、深く息を吐く。
何かに集中するように押し黙ったAを、子供達は不安げに見上げた。
「A……?」
チーノも思わず彼女の名前を呼ぶが、Aは構わず小さく呟いた。
『お願い……光を灯して。私達の帰る道を、照らして……!』
Aが言うと、彼女の両手が淡く光りはじめた。
その光景に、チーノも子供達も大きく目を見開いた。
やがて、ポッと歪な燭台に火が付き、A達を明るく照らした。
「A姉ちゃん凄い!!」
オルヴァーの嬉しそうな声に、Aは優しく微笑んだ。
「お姉ちゃん、魔法が使えるの?」
Aの服の裾を掴んで、少女が目を輝かせて見上げる。
少女の質問に、Aはゆっくりと首を振った。
『ううん、コレは魔法じゃないの。ちょっとだけ、私のお願いを叶えてもらっただけなのよ』
すると、ガシャンッと鉄格子が大きな音を立てた。
見れば、さっきまで中で倒れていた男が目をひん剥いて鉄格子を掴んでいた。
真っ直ぐAを見ながら、ワナワナと口を震わせていた。
「お前、その力……まさか……!」
『……行きましょう』
光の灯った燭台を手にしながら、A達は出口へと急いだ。
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作者名:双葉ちほ | 作成日時:2021年7月3日 22時