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これからホストに行くであろう人やキャッチの人など、この街らしい人達とすれ違いながらゆっくり公園に行くと、既にきりやんさんがいた。
少しゆっくりしすぎたかも。急いできりやんさんの方へ駆け寄ると、足音で気づいたのかきりやんさんはベンチから立ち上がりこちらを見た。
「すみません、遅くなりました」
「いやいや、俺が早く来すぎちゃっただけなんで」
「もし良かったら、呑みながら話しませんか?」
先程コンビニで買った銀色の缶ビールを見せると、きりやんさんはぱあっという効果音がつきそうな笑顔を見せた。
「いいんすか!?やったぁ…!」
ニコニコと缶ビールを受け取りそう言うきりやんさんはとても無邪気に思える。まだまだ知らないきりやんさんのことを少し知れた気がした。
「ぷはーっ!やっぱりお酒はビールが1番だわ」
早速缶を開けビールをグビッと流し込むきりやんさん。後についで私もビールを1口飲んだ。職業柄ビールはあまり飲まないせいで久しぶりに感じる独特の苦味に少し顔が歪む。
「…昨日の話なんですけど、必要最低限の荷物ならすぐ拠点に移れそうな感じです。でもそれだとAさん困っちゃいますよね」
「いえ、それで大丈夫です。この街に来た時は荷物なんて言えるほどの物もありませんでしたから」
「なら、決まりですね」
きりやんさんはそう言うと、残りのビールを飲み干し空き缶をゴミ箱に投げ捨てた。その直後、私の目の前に来たと思ったら腕を引かれ立たされた。
「俺らのせいで危ないことに巻き込まれるかもしれない、けどその時は俺が貴女の剣となり盾になります
それだけは、必ず守ります
俺の我儘を受け入れてくれた貴女への誠意です」
「…じゃあ、私は貴方が望むものになりましょう
蝶にでも花にでも、何にでも。あなたが必要とする時に必ず助けになります
私を救ってくれる貴方へのお礼です」
掴まれた腕は手に移り、お互いの小指が絡まりあった。
指切りげんまん、なんて小学生の頃に何回かやったぐらいで大人になってするなんて思ってもみなかった。
でも何故か、契約書よりもなにかの条約よりも固く結ばれた気がした。
それは多分、きりやんさんの言葉が誰が発するものよりも"おもい"からだろう。
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作者名:葵 | 作成日時:2024年3月12日 0時