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「なんとなーく、事情はきりやんから聞いてるけどねぇ…本当に何も知らないとか分かんないし」
「僕には怪しく見えないけどね」
「きりやんのことは俺も信用してるからそう思いたいけど、疑っちゃうでしょ」
「そういえばNakamu、他の3人は?」
「あぁ、そろそろ帰ってくんじゃないかな」
3人の会話に着いていけず端で佇んでいると、きりやんさんが声をかけてくれた。
「もうちょっとしたら全員揃うんで、揃ったら紹介しますね」
聞き慣れてきた声は今の状況にいる自分を落ち着かせるのには十分だった。
ここ数日で明らかに自分の中できりやんさんの存在が大きくなっていることが分かる。今の私にとって、きりやんさんは必要不可欠な存在で、だけどお互いが想いあっている訳ではなく利害が一致しているから一緒にいるだけだという事実は、私の胸を締め付ける。
…きりやんさんは、私の事どう思っているのだろう?
そんなこと烏滸がましいから聞けないけれど。少しくらい期待しても許されるのかな
ふぅ、と息を着くと丁度のタイミングで隠し扉が開く音がした。
明らかに複数人いるのが分かる足音の多さに、もしかしてこの足音の正体はと考える。
「ごめんちょっと手こずった、、、、って、だれ…??」
「きんとき止まんな後ろ詰まるだろ」
一番最初に入ってきた青と黒色のジャージを身にまとった男性は私を見るやいなや固まってしまった。そして、後ろにいるギザギザで鮫のような歯が特徴的な緑の男性は、ジャージの方とは対照的に威嚇を始める。
威嚇されただけかと思いきや、急に距離を詰められた。
「オメェ誰だ?答えろ」
鼓膜を刺激する低い声に言葉が詰まる。
詰まる理由はそれだけでは無い。首に感じる冷たいもの。
少し動けば切れそうな、銀色に光るナイフはよく使っているのだろうか丁寧に手入れされている。
「ちょ、ちょっと!シャークんやめてよ!今日連れてくるって話したでしょ!?例のAさん!
てか危ないから早くナイフしまえよ!」
きりやんさんの言葉にシャークんと呼ばれる人はナイフをしまい、私から距離をとった。
解放されたからか、また腰が抜けそうになる。
一日でこんな何回も映画のようなことを体験したのは今日が初めてだ。
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作者名:葵 | 作成日時:2024年3月12日 0時