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大金 ページ31

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Aは、コネシマにそう言われて、ひとつ作戦を思いついた。プレゼント、アリかもしれない。せっかくの夏休みだし、ちょうど外に出ようかと考えていたところだった。

「そうします。」
「何買うか分からへんし、適当にやるわ。」

コネシマは、そういうとAの手にいくらかお札を握らせた。三千円くらいかな?ありがたい話だ、と手の中に目をやると、そこにあったのは千円よりもゼロがひとつ多いお札だった。ギョッと覗き込んで数えると、それも一枚や二枚ではない。そこにはピッタリ十枚あった。どれもゼロが四つ並んでいる。
これがどういうことなのか、分かるだろうか。つまり、コネシマは一介の女子高生であるAに、十万円もの大金をポンと渡したのだ。Aはもう少しで悲鳴をあげるところだった。

「こ、こんなにもらえません!」
「ええから。もらっとけばええやん。」
「で、でも⋯⋯。」
「普段のお小遣いも兼ねとるし。余ったら貯金でもしたら?」
「うーん⋯⋯。」
「使い方考えるのも社会勉強になるやろ。」
「本当に良いんですか⋯⋯?」
「うん。ええよ。」
「ありがとうございます。大事に使います⋯⋯!」

コネシマは、驚きながらも受け取ったAを見て、満足そうに笑った。Aは、自分が大人になっても十万円をポンと出すような状況は、来ないだろうなと思った。普通はその金銭感覚が正しいので、Aの祖母の教育は成功だと言えるだろう。

「あっ、あの、サプライズで渡したいので、ゾムさんには内緒でお願いします!」
「おん。黙っとく。」
「じゃあ、出かけてきますね。」

踊るように軽快な足取りで、Aは縁側を駆けていった。今から出かける準備をするのだろう。残されたコネシマは、静かに口を開いた。

「ゾム。あとつけたってな。」

そこに、返事はない。ただ、分かってる、そう言いたげに木造の床が軋む音が鳴った。




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作者名:月出里 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home  
作成日時:2024年3月12日 22時

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