迎え ページ11
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まだ出会ったばかりだから、趣味の話や好きなテレビ番組の話、推してるアイドルの話に出身の学校の話、その他にもたくさん話したいことや聞きたいことがあった。そのどれもが新鮮で、眩しくて目を細めてしまうかのように自然に笑みが溢れた。
すると、ちょうどAたちが出たタイミングでゆっくりと学校の門の前に停まった車を見て、ギョッとした。
黒塗りでピカピカの、窓にはスモークフィルムが貼られている、いかにもな高級車だったからだ。周囲は少しざわつきはじめたような気がする。きっと違う車だ、きっと別でそういう車に乗っている人がいるのだ。お願いだからそのまま通り過ぎてほしい、私には関係ないはず⋯⋯!
Aは心の中で強く念じていた。目の前の車よ、今すぐどこかへ行ってくれ、と。
ウィーン、と機械的な音を立てて、目の前の車の窓が下がる。
「お嬢、迎えにきたで。」
しかし、Aの必死の願いも届かず、そこから仲良くなれなかったゾムが声をかけてきたのだった。
終わった。Aにとって、その状況は華の高校生活の終わりを意味している。考えうる限り最も悪い状態だ。
呆然とするAの後ろで、女の子たちがぎこちない感じでじゃあね、と言いながら帰っていく。田舎の子ならともかく、都会の子たちが知らないわけがないのだ。あんなに怪しい車が、ヤクザだとかそういう人たちの間で使われているものだということを。Aも弱々しい声で、あ、うん、じゃあね⋯⋯とかろうじて返した。
「な、なんで目の前に車持ってきちゃうんですか!?」
車に乗り込むや否や、Aは感情のままに言葉をぶつけた。あんなふうに登場されたら、Aが怖いところの娘だと丸わかりだ。できる友達もできなくなってしまうだろう。俯いて拳を握りしめる。下手くそなりに、怒っているのだ。だというのに、ゾムは何を言っているか分からないといった態度だった。
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作者名:月出里 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home
作成日時:2024年3月12日 22時